武田百合子全作品(6) 遊覧日記(ちくま文庫)

武田百合子全作品(6) 遊覧日記(ちくま文庫)

百合子さんと花さん、(おそらく)ふたりで遊覧した場所をつらつらとつづった日記。百合子さんの突き放したような視線の割にはしれっとした感情のこめ方とか、じっと人を見つめて観察し、さらっと本質をついてしまうような文章がとても好き。今のところ百合子さんの本では富士日記が不動の一位だけれど、この本もぶらぶらとしている百合子さんの飄々加減が好ましい。
トーキョー・プリズン (角川文庫)

トーキョー・プリズン (角川文庫)

正直、謎を詰め込みすぎて結局どこでなにがどう解決したのか読み終わってもいまいちつかめない感じ。というか、詰め込みすぎているせいでどの謎にも集中できず解決されてもへぇって思ってしまう。ストーリーの運びも後半はまだましだったけれど前半はまるでゲームかなにかのように都合よくいろいろ運びすぎではっていうぐらい都合よく物事が運ぶ。(たまたまイツオたちと知り合える。たまたまキョウコの自殺未遂直後に出くわすなどなど)筋が見えすぎて読んでて興ざめ。戦争に対する記述が正しいかどうかはわからないけれど、ただ、キョウコが言ってるように戦争がずいぶん長いこと他人事的な感覚でとらえられていたのなら、いきなり戦争モードになって、死してなんとかとか言われだしたところでそれを実感をもって実行できるんだろうか??もともと軍人とかであったならまだしも、一市民、町民の彼らにそこまでの意識を植えられるものなんだろうか。その辺があいまいというか、ひとつの言葉に頼りすぎていたような気がする。おそらくそういう人もいたんだろうけれど、だったら、なぜそこまで妄信的狂信的になれたのかもう少し根拠がほしかった。全体的に退屈。