霧のむこうに住みたい

霧のむこうに住みたい

須賀敦子の文章は、読んでいると泣きたくなる。最初の一文から終りの一文まで、そんな気分がずっと続く。特別悲しい話をしているわけではないのに、どこかそんな気分にさせるのは、須賀敦子の本で語られるほとんどのことが、もうなくなってしまったものに対してだからなのかも。須賀敦子は、それをことさら惜しむでも懐かしむでもなく淡々と楽しげに語っていて、だからこそ喪失感を覚える。須賀敦子はわたしの一部分を確実に変えていて、むしろ、須賀敦子の文章そのものを自分の中に取り込みたいと読んでいるとき半ば本気で思う。彼女の新作がでないことが、今更ながらに惜しまれる。

のぼうの城

のぼうの城

のぼう様!なんて愛すべきキャラクターばっかりなのか。みんながみんなかっこよくってたまらない。正直、時代物は苦手です。その時代に対する背景知識がまったくないので、小難しい時代用語的なものをだされたら正直読む気をなくす自信があるのですが、これと、司馬遼太郎に関しては大丈夫でした。すかっとする、時代小説でありながらちゃんとしたエンタメになってる。読んでる間、いつでもやめられると思っているのに何でかずっと読んでいて気付いたら明け方一歩手前でした。 ところで、映画化するならのぼう様は阿部寛でお願いします。