、まったく無意味な言葉

月が出ているのが印象的だった。それ以外は特に何の印象も残っていないけれどただ、あの人の声だけが無駄に頭の中を駆け巡って知らず「くそったれ」と毒づく。勝手に居座ってんじゃねぇよ、さっさと出て行け、あぁいやだ。夜のにおいのまったくしないこの国はなんだってこうもあっけらかんとしているのか。そのくせ夜のもつ力だけはどこも平等にあるらしく夜書いたラブレターはバカみたいにうそ臭くって酔っ払っている。ひとりじゃそんなのすらも笑えない。走り出したら記憶が飛ぶかと思ったが走れば走るほどいろいろなことが追いかけてきて立ち止まる。飛ばしすぎたのか息があがる。あぁいやだ。何にも残らないこの感じが大嫌い。あぁ、まったく、耳元で流れる音楽のあまりのからっぽさにも何一つ救われやしない。