THE QUEEN


レイトショーで見てきました。寝ている人が多かった気が。驚くばかり。さて、映画、面白かったです。おもしろいという言葉で片付けていいのかどうか迷ってしまうのですが、良い映画だと思います。ヘレン・ミレンの演技、多くの方が絶賛していますがものすごいです。ヘレン・ミレンの背筋の伸び具合、所作、すべてに品があり、すべてに程よい緊張感がみなぎっており、考え抜かれた動作の美しさに魅せられました。この方、もとはロシア貴族の出だとか。だからかと合点する部分もありますが、やはり彼女の演技力の素晴らしさに起因するところが大きいでしょう。また、この映画にはもう一人、欠かせない人が。トニー・ブレア首相。マイケル・シーンが演じていますが彼もすごいや。微妙な苛立ちの演技と、信奉に近い女王に対する敬愛の念をすべて表情で演じ分ける。うまい。また、この映画の絶妙な点は、すべてにおいて微妙なバランスで中立を貫いているところです。ダイアナを肯定しすぎることも、否定しすぎることもせず、また、王室側に偏りすぎることもない。ブレアの奥さんや、ブレアの側近のように、否定側の人間を絡めることで、辛辣な意見もやんわりと包括し、国民の言葉を上手い具合に組み入れる。次第に耳を傾けていく女王の心の機微に、見ているものはイライラし、はっとし、ほっとし、思いがけない人のやさしさに涙したりするのです。ダイアナを悼んで置かれた花の数が増していく場面はお上手としかいいようがない。正直、わたしはダイアナが死んだことで世界に与えた影響だとか人々の悲しみだとかをあまり知らないのですが、そんなわたしでも理解せざるを得ない構成が素晴らしい。こんなにも悲痛なものだったのだと改めて知りました。そしてこんなにも大きな出来事だったのだと。古い映像と、新しい映像の見せ方も上手で違和感がない。見終わった後は何かあっという間だと思いましたが、それでも114分あったんですね。驚き。ただ、確かに勢いがつくのが遅かったり、国王の行動が妙に軽薄に見えたりした場面もありました。その辺は残念。 それにしてもところどころ見られるシニカルな台詞はイギリスならではだ。